「塾に通わせているのに、テストの点数がなかなか変わらない」と悩む保護者の方は少なくありません。お子さん本人も「ちゃんと通っているのに、なぜ?」ともやもやしているかもしれません。成績が上がらない理由の多くは、能力ややる気よりも、塾の授業の受け方と家での勉強の仕方にあります。この記事では、よくある原因と、今日から見直せる勉強の進め方、塾の使い方を順番に整理します。
塾に通っても成績が上がらないのはなぜ?
結論から言うと、塾の授業は「わかる」を増やす場で、それを「できる」に変えるのは授業の外の時間だからです。
先生の解説を聞くと、その場では内容を理解できたように感じます。ところが、テストでは何も見ずに自分の力で解かなければなりません。聞いて理解することと、自力で解けることの間には大きな差があります。この差を埋める練習が足りないと、通塾の時間が増えても点数にはつながりにくくなります。
「塾に行った日=勉強した日」になっていませんか?
成績が伸び悩むお子さんによく見られるのが、塾に行ったことで満足してしまうパターンです。ノートをきれいに写した、授業を最後まで聞いた、という手応えはあります。しかし、それだけでは習った内容を自分で思い出す練習にはなっていません。
塾に限らず、成績が伸びる子と伸び悩む子の違いを広く知りたい場合は、成績が上がらない原因からひも解く勉強の法則もあわせて読んでみてください。
塾に通っても成績が上がらない主な原因
原因はひとつとは限らず、いくつかが重なっていることがほとんどです。代表的な5つを確認していきましょう。
授業のあとに復習していない
授業を受けたまま次の授業まで何もしないと、習った内容の多くは抜け落ちてしまいます。
記憶の研究では、読み直すよりも「思い出す練習」をしたほうが内容が長く残ることが分かっています。よく知られているのが、米国のセントルイス・ワシントン大学の研究者が2006年に発表した実験です。この実験では、文章を読み直したグループと、覚えている内容を書き出すテストを受けたグループを比べました。5分後の成績は読み直したグループがわずかに上でしたが、1週間後には結果が逆転しています。1週間後に思い出せた割合は、テストを受けたグループが約56%、読み直したグループが約42%でした(ローディガーとカーピックの論文、2006年)。
基礎の抜けを残したまま先に進んでいる
数学や英語は、前に習った内容の上に新しい内容を積み上げる教科です。
たとえば中2で習う連立方程式は、中1の一次方程式が解けることが前提になっています。英語でも、be動詞と一般動詞の区別があいまいなままだと、その後の文法でつまずきやすくなります。塾の授業が今の学年の内容を前提に進むと、抜けている部分は授業の中では埋まりません。わからない説明が続くと質問もしにくくなり、授業についていけない状態が長引いてしまいます。
塾の内容と学校の定期テストがずれている
塾の授業と学校の進度が合っていないことも、点数に表れにくい原因です。
先取り学習を中心にする塾では、学校で今習っている単元とは別の内容を扱っていることがあります。定期テストは学校の授業やワーク、プリントから出題されることが多いものです。そのため、塾で力をつけていても、テスト範囲の対策が手薄になりがちです。テスト範囲が分かった時点で、学校のワークや配られたプリントを中心にした対策に切り替えることが大切です。
勉強が「読むだけ」「写すだけ」になっている
机に向かう時間は長いのに、点数が伸びないこともあります。
米国の心理学者ダンロスキーらが2013年にまとめた研究レビューでは、よく使われる10種類の勉強法の効果を比較しています(米国心理科学協会による紹介ページ)。その中で効果が高いと評価されたのは、練習テストと分散学習の2つでした。練習テストは自分で問題を解いて確かめること、分散学習は間隔を空けて繰り返すことです。一方で、教科書の読み返しや線を引くことは、効果が低いと評価されています。ノートをきれいにまとめる、解答を写すといった勉強が中心なら、やり方を見直す余地があります。
目標があいまいなまま通っている
「なんとなく通っている」状態では、授業の内容も頭に残りにくくなります。
「次の定期テストで数学を60点から70点にする」のように目標が具体的だと、塾で何を聞けばよいか、家で何を復習すればよいかがはっきりします。受験がまだ先に感じられる中1・中2のうちは、目の前のテストでの小さな目標から始めると動きやすくなります。
成績を上げるための勉強の見直し方
見直しの中心は、授業で「わかった」内容を、自分の力で「できる」状態にする練習を増やすことです。
授業の当日か翌日に「思い出す復習」をする
塾から帰ったら、ノートを閉じたまま今日習ったことを書き出してみましょう。
思い出せなかった部分だけノートで確認し、授業で扱った問題をもう一度自力で解きます。時間は10〜15分ほどでもかまいません。大切なのは、読み返すのではなく、思い出したり解き直したりすることです。
間隔を空けて、もう一度解き直す
一度解けた問題も、日を空けて解き直すと定着しやすくなります。
たとえば授業の翌日、週末、テスト前というように、間隔を少しずつ広げて同じ問題に取り組みます。間違えた問題に印をつけておけば、2回目からは印のついた問題だけを解けばよいので、時間もかかりません。復習のタイミングの決め方は、定期テストで点を取るための復習のタイミングとやり方で詳しく紹介しています。
つまずいた単元までさかのぼる
今の学年の問題がどうしても解けないときは、つまずきの出発点を探します。
過去の定期テストや塾の確認テストを見返し、間違いが集中している単元を書き出してみましょう。数学なら計算や方程式、英語なら文法の基本など、前の学年の内容に原因があることも少なくありません。遠回りに見えても、基礎を固め直したほうが結果的に早く伸びます。どこまで戻ればよいか分からない場合は、塾の先生に相談するのが確実です。
間違えた理由を一言でメモする
丸つけをして終わりにせず、なぜ間違えたのかを書き残しておきましょう。
「公式を覚えていなかった」「問題文の条件を読み落とした」「計算ミス」など、理由によって次にやるべきことが変わります。先ほどのダンロスキーらのレビューでも、「なぜそうなるのか」を自分に問いかけながら学ぶ方法は、中程度の効果があると評価されています。正解した問題も、解き方を人に説明できるかを確かめると理解が深まります。
次のテストの目標を数字で決める
目標は「次の定期テストで英語を10点上げる」のように、数字で決めるのがおすすめです。
目標が決まったら、毎日やることを「英単語を10個」「数学のワークを2ページ」のように小さく分けます。できた日をカレンダーなどに記録していくと、続けたこと自体が自信になります。
塾をもっと活用するためのポイント
同じ塾に通っていても、使い方しだいで得られるものは大きく変わります。
分からないところは授業の前後に質問する
授業中に質問しづらい場合は、授業の前後や自習室の時間を使いましょう。
質問するときは、問題に印をつけて持っていき、どこまで分かってどこから分からないのかを伝えるとスムーズです。質問に対応してもらえる時間や方法は塾によって違うため、先生に一度確認しておくと安心です。
定期テスト前の対策を塾に相談する
学校のテスト範囲が分かったら、範囲表を塾の先生に見せて相談してみましょう。
塾によっては、学校ごとのテスト範囲に合わせた対策授業や、ワークの進め方の指導をしてくれます。対策の有無や内容は塾ごとに異なるので、どのような準備をしてもらえるのかを確認しておくと、学校とのずれを減らせます。
集団指導と個別指導、合っているのはどちら?
塾のタイプがお子さんに合っていないと、通い方を工夫しても効果が出にくいことがあります。
集団指導は決まったペースで授業が進み、周りの生徒から刺激を受けやすいのが特徴です。一方、基礎に抜けがある子や、自分から質問するのが苦手な子には、つまずいた単元から進められる個別指導が合う場合があります。集団塾に向かない子の特徴も参考にしながら、今の塾の形式が合っているかを見直してみてください。
保護者ができるサポートは?
保護者の役割は、勉強を細かく管理することよりも、続けやすい環境を整えてお子さんの話を聞くことです。
結果よりも取り組みに目を向ける
成績が上がらないことを責められると、お子さんは自信をなくし、勉強の悩みを話しにくくなります。
塾に通い続けていることや、復習の時間をつくれたことなど、取り組みそのものを認める声かけを心がけましょう。そのうえで、どの教科のどこが分からないのかを一緒に確認すると、具体的な対策につなげやすくなります。
塾と情報を共有する
家での様子と塾での様子は、違って見えることがあります。
面談や連絡の機会を使って、授業の理解度や宿題への取り組み方を塾に聞いてみましょう。家で集中できていない、復習の時間がとれていないといった家庭側の情報を伝えることも、指導の見直しに役立ちます。スマホやテレビから離れて勉強できる時間と場所を用意することも、家庭でできる大切なサポートです。
それでも成績が上がらないときはどうする?
見直しを続けても変化がない場合は、原因をもう一度整理したうえで、今の塾を続けるかどうかを考えます。
伸びが見えない時期があることも知っておく
勉強のやり方を変えても、点数に表れるまでには時間がかかることがあります。
定期テストは範囲も難しさも毎回違うため、1回の結果だけで判断せず、2〜3回分の推移で見るのが現実的です。努力しているのに伸びが止まったように感じる時期については、成績が伸び悩むプラトー状態と抜け出す方法で詳しく解説しています。
転塾や退塾を考える目安
次のような状態が続くなら、塾を変える、あるいはいったんやめることも選択肢に入ります。
- 授業のレベルや進度が合わず、質問しても理解できない状態が続いている。
- 塾の先生に相談しても、指導内容や進め方が変わらない。
- 通塾の負担が大きく、家で復習する時間がほとんど取れない。
- お子さん本人が、今の塾では続けられないと感じている。
塾をやめる場合は、次の学び方を決めてから手続きを進めると、勉強の習慣が途切れにくくなります。塾への伝え方に迷ったら、塾を辞める理由の伝え方と例文が参考になります。通信教育やオンライン指導など、自分のペースで進められる方法が合う子もいるので、お子さんと話し合って選びましょう。
復習や計画づくりが続かない子には、学習の進め方を管理してもらうコーチング塾という選択肢もあります。詳しくはコーチング塾の仕組みと向いている子の特徴で紹介しています。オンライン塾の効果が気になる場合は、オンライン塾が意味ないと言われる理由と効果が出る使い方も参考にしてください。
まとめ
塾に通っても成績が上がらないときは、次の点を見直してみてください。
- 授業を聞いて終わりにせず、当日か翌日に思い出す復習をする。
- 間違えた問題は間隔を空けて解き直し、間違えた理由をメモする。
- 定期テスト前は、学校の範囲に合わせた対策を塾に相談する。
- 塾のタイプや通い方が合っているかを、お子さんと一緒に確認する。
成績が上がらないのは、お子さんの力が足りないからとは限りません。やり方を少しずつ整えていけば、塾で過ごす時間を点数につなげやすくなります。