「トゥントゥントゥン・サフール」「トララレロ・トラララ」など、お子さんが意味の分からない言葉を口にしていて戸惑っていませんか。これは「イタリアンブレインロット」と呼ばれる、AIで作られたキャラクター動画の名前です。この記事では、その正体と脳や生活への悪影響について分かっていること、家庭でできる対策を整理します。
イタリアンブレインロットとは?AIで作られたキャラクター動画
イタリアンブレインロットは、生成AIで動物や物を組み合わせて作った架空のキャラクターと、その短い動画の総称です。キャラクターには「なんとなくイタリア語っぽい」響きの名前が付き、意味のない語りや歌とともに紹介されます。2025年にTikTokやYouTubeショートで広まり、日本の小学生の間でも大流行しました。
どんな動画なのか
よく知られているのは、三本足のサメのキャラクター「トララレロ・トラララ」です。バットを持った手足のある木のキャラクター「トゥントゥントゥン・サフール」も人気があります。
動画は数秒から数十秒ほどで、ストーリーや教訓はほとんどありません。つい声に出したくなる名前のリズムと、予想のつかない見た目の組み合わせが特徴です。
小学生の流行語で1位になった
小学館のJS研究所とコロコロコミック研究所は、2025年12月に「2025年小学生年間トレンド調査」を発表しました。イタリアンブレインロットは、低学年の女の子(『ぷっちぐみ』読者)の流行語で1位になっています。男の子(『コロコロコミック』読者)の流行語でも2位でした。
同じ調査では、女の子が一番遊んでいるゲームの5位に「ロブロックス」が入っています。後で紹介するゲーム「Steal a Brainrot」も、このロブロックスの中で遊べるゲームです。
子どもたちが夢中になる理由
大人には不気味で意味不明に見えても、子どもにとってはその意味のなさ自体が面白さです。名前が長くリズムがよいので、何度も口に出したくなります。休み時間に友だちとまねし合うことで、同じネタで笑える仲間だという感覚も生まれます。
つまり、流行の中心にあるのは友だちとの共通の話題です。この点は、家庭での対策を考えるときにも大切になります。
「脳が腐る」は本当?ブレインロットの意味
「ブレインロット(brain rot)」は英語で「脳の腐敗」という意味の言葉で、病名や診断名ではありません。見たからといって、脳が実際に傷んでしまうわけではないので安心してください。
英国のオックスフォード大学出版局は、2024年の「今年の言葉」にこの言葉を選びました。使用頻度は2023年から2024年にかけて230%増えたと発表されています。
同出版局の定義は、取るに足らないネット上のコンテンツを見すぎた結果として起きる「とされる」、精神的・知的な状態の悪化です。定義の中でも「とされる(supposed)」という言葉が使われています。ネット漬けの生活への皮肉や自虐として広がった表現だと考えるとよいでしょう。
イタリアンブレインロットは、こうした「中身のないネット動画」の代表として名前が付いたものです。動画そのものを怖がる必要はありませんが、見方によっては生活に影響が出ることがあります。
イタリアンブレインロットの悪影響は?分かっていること
問題になりやすいのは動画の内容より、短い動画を長時間、受け身で見続ける習慣です。影響が出やすいのは、集中力、睡眠、友だち関係の3つです。
ショート動画と集中力の関係
米国心理学会の学術誌『Psychological Bulletin』に2025年、ショート動画に関するメタ分析が掲載されました。71件の研究、約9万8,000人分のデータをまとめたものです。
その結果、ショート動画の利用が多い人ほど、注意力や衝動を抑える力が低い傾向が見られました。この傾向は、子どもと大人の両方で同じように見られたと報告されています。
ただし、これは「関連がある」という結果で、動画が原因だと証明されたわけではありません。もともと集中が苦手な人ほど短い動画を好む、という逆の関係も考えられます。それでも、長時間の視聴を見直すきっかけにはなるデータです。
夜更かしと睡眠不足
動画もゲームも区切りが見えにくく、寝る時間が遅くなりがちです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、小学生は9〜12時間を目安に睡眠をとるよう勧めています。中学・高校生の目安は8〜10時間です。
同ガイドは、寝床でデジタル機器を使うと寝つきや睡眠の質が悪くなりやすいと説明しています。そのうえで、機器を寝室に持ち込まず、別の部屋に置くよう勧めています。
睡眠が足りないと、日中のイライラや授業中の眠気にもつながります。中高生の睡眠と勉強の関係は、受験生に必要な睡眠時間の目安でも紹介しています。
言葉のまねが友だちトラブルになることも
動画のセリフや動きをまねすること自体は、子ども同士の遊びの一つです。ただ、相手が嫌がっているのにキャラクターの名前で呼び続けたり、しつこく繰り返したりすると、からかいやいじめにつながることがあります。
また、AIで大量に作られる動画は、子ども向けに内容を確認して作られているとは限りません。どのチャンネルの動画を見ているのか、ときどき一緒に確かめておくと安心です。
落ち着きのなさが心配なときは
集中が続かない、落ち着きがないといった様子は、睡眠不足や生活リズムの乱れでも起こります。一方で、発達の特性があるかどうかは、家庭で判断できるものではありません。
生活を整えても様子が変わらないときや、学校生活に支障が出ているときは、一人で抱え込まずに相談しましょう。担任の先生やスクールカウンセラー、かかりつけの小児科、自治体の教育相談などが窓口になります。
ロブロックスで泣いたり夜更かししたりするのはなぜ?
人気ゲーム「Steal a Brainrot」が、キャラクターを集めて盗み合う仕組みだからです。取られたときの悔しさと、取られないように見張りたい気持ちが、子どもをゲームから離れにくくします。
キャラクターを盗み合うゲームの仕組み
「Steal a Brainrot(スティール・ア・ブレインロット)」は、2025年に公開された人気ゲームです。ゲームプラットフォームのロブロックス(Roblox)の中で遊べます。プレイヤーはブレインロットのキャラクターを買って自分の基地に並べ、ゲーム内のお金を増やしていきます。
公式の紹介文でも、ほかのプレイヤーからレアなキャラクターを盗むことが遊びの中心とされています。基地の守りが手薄になると、時間をかけて集めたキャラクターを取られてしまうことがあります。
取られると泣いてしまう理由
大人から見ればゲームのデータでも、子どもにとっては時間をかけて集めた宝物です。それを目の前で取られれば、強い悔しさや怒りを感じるのは自然な反応です。
泣いているときは「たかがゲームで」と突き放すより、まず「悔しかったね」と気持ちを受け止めましょう。落ち着いてから、遊ぶ時間や終わり方を一緒に考えるほうが、次のトラブルを防ぎやすくなります。
「今だけ」のイベントが夜更かしを招く
オンラインゲームには、期間限定のイベントや、その時間にしか手に入らないキャラクターがよく用意されています。「今参加しないと友だちに置いていかれる」と感じると、夜遅くでもやめにくくなります。
子どもの意志が弱いからではなく、続けたくなる仕組みがあると理解しておきましょう。そう考えると、叱るだけで終わらせずに、ルールや設定で手助けする発想が持てます。
家庭でできる対策は?いきなり禁止する前に試したいこと
急にスマホやゲームを取り上げると、隠れて見るようになったり、友だちの話題に入れなくなったりすることがあります。話を聞く、設定を整える、家族でルールを決めるという順番で進めるほうが長続きします。
まずは一緒に見て、話を聞く
「どのキャラクターが好き?」「どこが面白いの?」と、興味を持って聞いてみてください。好きなものを否定されないと分かると、子どもは見ている内容を話しやすくなります。自分の言葉で説明することで、何に夢中になっているのかを客観的に振り返る練習にもなります。
叱るか見守るかで迷うときは、親が見守るか介入するかの判断基準が参考になります。具体的な言葉の選び方は、親ができる声かけと関わり方の例にまとめています。
YouTubeの再生履歴と自動再生を見直す
YouTubeのおすすめ動画は、再生履歴をもとに選ばれています。YouTubeの公式ヘルプによると、削除した再生履歴は、それ以降のおすすめには使われません。
再生履歴をオフにして履歴が少ない状態にすると、トップページのおすすめも表示されなくなります。あわせて自動再生をオフにすれば、動画が次々と流れ続ける状態を断ちやすくなります。
ロブロックスは保護者用の管理機能を使う
ロブロックスでは、保護者のアカウントを子どものアカウントに連携させると、保護者による管理機能を使えます。公式ヘルプでは、1日に遊べる時間の上限や、月ごとの課金額の上限を設定できると案内されています。遊べるゲームの内容レベルやチャットの範囲も調整できます。
設定画面や項目の名前は変わることがあります。実際に設定するときは、ロブロックスの公式ヘルプで最新の手順を確認してください。
寝る前は端末をリビングに置く
睡眠を守るには、寝室に端末を持ち込まないルールが役立ちます。「夜9時になったら家族全員のスマホを充電場所に置く」のように、親も一緒に守る形にしましょう。子どもだけが我慢している感覚が減り、ルールを受け入れやすくなります。
中学生で、勉強中もついスマホを触ってしまう場合は、中学生でもできるスマホの集中対策も参考にしてください。
1日何時間までならいい?
「この時間までなら安全」という、全員に当てはまる基準はありません。こども家庭庁の「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」では、小学生(10歳以上)の平日のネット利用時間は、平均で約3時間44分でした。すでに多くの子どもが、1日の中で長い時間をネットに使っていることが分かります。
平均と比べるより、睡眠、宿題、外遊びや家族との時間が確保できているかで判断するのが現実的です。削られているものがあれば、その分だけ時間を見直しましょう。
「暇だ」と言われても、すぐに画面を渡さない
刺激の強い動画から離れると、子どもはしばらく退屈そうにします。そこですぐに画面を渡さず、散歩や外遊び、ブロック遊び、料理の手伝いなど、体や手を動かす過ごし方を提案してみてください。
退屈な時間から、自分で遊びを考え出す力が育つこともあります。最初は親が一緒に付き合うと、切り替えがスムーズになります。
まとめ
- イタリアンブレインロットは生成AIで作られたキャラクターと短い動画のことで、2025年には低学年の女の子の流行語1位になりました。
- 「ブレインロット」は病名ではありませんが、長時間の受け身の視聴は集中や睡眠に影響する可能性があります。
- ロブロックスの「Steal a Brainrot」は盗み合う仕組みのため、泣く、夜更かしするといったことが起きやすいゲームです。
- 禁止する前に、話を聞く、設定を整える、寝る前のルールを家族で決める、の順で試しましょう。
流行そのものを怖がる必要はありません。まずは、お子さんが何に夢中になっているのかを知るところから始めてみてください。