塾の保護者面談の案内が届くと、何を話せばよいのか迷う保護者は少なくありません。成績の説明を聞き、講習をすすめられて終わった。そんな面談になってしまったという声もよく耳にします。この記事では、塾の保護者面談で実際に話される内容と、保護者の側から聞いておきたいことを整理します。あわせて、講習をすすめられたときの判断のしかたと、契約の前に知っておきたいルールも紹介します。
塾の保護者面談は「決める場」ではなく「情報を交換する場」
塾の保護者面談は、その場で何かを契約する場ではありません。塾と家庭が、それぞれ相手には見えない情報を持ち寄る時間です。
塾の側には、家庭からは見えないものがあります。授業中に手が止まる単元、宿題の提出状況、テストの点数の推移などです。
家庭の側にも、塾からは見えないものがあります。家での過ごし方、本人が口にする不満、そして払える費用の上限です。
この2つを突き合わせることが面談の目的です。提案を受けるだけの時間にしてしまうと、いちばん価値のある部分を使わずに終わります。
塾の保護者面談はいつ、何を話す?
多くの塾では、年に2回から3回ほど面談が設定されます。時期は塾によって違いますが、季節講習の前に置かれることが多くなります。
つまり夏休み前、冬休み前、春休み前です。これは、講習の案内と重なる時期でもあります。
話される内容は、おおむね次の3つに分かれます。
- 成績の現状。前回からの変化と、志望校との距離。
- 塾での様子。出席状況、宿題、授業中の取り組み。
- 今後の提案。コマ数の増減、講習、コースの変更。
1回あたりの時間は、15分から30分程度が一般的です。塾によっては、本人が同席する形と保護者だけの形があります。どちらになるのかは、案内が届いた時点で確かめておくと準備しやすくなります。
学校の三者面談とは役割が違う
同じ「面談」でも、学校と塾では持っている情報が違います。学校は内申点と出願の手続きを握っています。塾が持っているのは、模試の結果と日々の演習の記録です。
そのため、聞くべきことも変わります。内申点や出願先の相談は学校が先です。学校側の面談については中学校の三者面談で聞くことにまとめています。
塾の面談では、そこで聞いた話を持ち込むと話が早くなります。学校で言われた課題を、塾の指導でどう埋めるのかという聞き方です。
面談の前に用意しておきたい3つのもの
準備なしで行くと、説明を聞くだけで15分が過ぎてしまいます。次の3つをそろえておくと、時間の密度が変わります。
- 直近のテスト結果と通知表。数字を見ながら話せます。
- 本人が困っていること。事前に聞いておきます。
- 聞きたいことを3つに絞ったメモ。優先順位がつきます。
もう1つ、面談の前に家庭で決めておきたいことがあります。年間でいくらまで出せるかという上限です。
上限が決まっていないと、提案されたその場で判断できません。逆に上限が決まっていれば、「その範囲で組めますか」と相談できます。
学年ごとの費用の目安は塾の料金・費用の相場で整理しています。
成績と指導について聞いておきたいこと
聞くべきことは、成績の読み方と指導の中身の2つです。どちらも、担当の先生にしか答えられない内容にしぼるのがこつです。
成績について聞くこと
- 点数が動かない原因は、理解と演習量のどちらにあるか。
- いま最優先でつぶすべき単元はどこか。
- 次の面談までに、どの数字が動いていれば順調といえるか。
3つめが特に大切です。次の目標が数字で決まっていれば、次の面談で成果を確かめられます。
指導について聞くこと
- 授業についていけているか、置いていかれている場面はないか。
- 担当の先生は変わる予定があるか。
- 質問や自習のために、授業以外で使える時間はあるか。
「ついていけていない」と言われたときは、原因を分けて考えてください。本人の努力不足とは限らず、授業の形式が合っていないこともあります。判断の目安は集団塾に向かない子の特徴で整理しています。
講習や追加コースをすすめられたときの判断
面談の後半で、講習やコマ数の追加を提案されることがあります。その場で返事をする必要はありません。
持ち帰って検討したいと伝えるのは、失礼なことではありません。むしろ、費用のかかる判断として当然の反応です。
その場では、次の3つを確認しておきます。
- 総額はいくらか。1コマの単価ではなく、教材費まで含めた合計で聞きます。
- 受けなかった場合に何が起きるか。具体的に答えられるかを見ます。
- 減らす選択肢はあるか。教科をしぼる、日数を減らす、という形です。
2つめの答え方に、その提案が本人に必要かどうかが表れます。「受けないと不安です」しか返ってこないなら、判断材料にはなりません。
伝え方に迷うなら、決まった言い方を用意しておくと楽です。「家で相談してから、今週中にお返事します」で十分に伝わります。期限を添えると、塾の側も予定を立てられます。
講習の費用をどう見積もるかは春期講習の費用の考え方で説明しています。季節が違っても、比べ方の考え方は同じです。
契約の前に知っておきたいルール
学習塾の契約には、法律で決められたルールがあります。知っているだけで、面談での判断がぐっと楽になります。
学習塾は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」の対象です。対象になるのは、期間が2か月を超え、金額が5万円を超える契約です。消費者庁の特定商取引法ガイドに、その要件が示されています。
対象になる契約では、塾の側に次の義務があります。
- 契約前に概要書面を渡すこと。役務の内容、対価、期間などが書かれています。
- 契約時に契約書面を渡すこと。担当者名や契約日も記載されます。
- 書面を受け取った日から数えて8日以内はクーリング・オフができること。
つまり、書面をもらわずに口頭で申し込む形は、本来の手順ではありません。見積もりだけでなく、書面を出してもらってください。
途中で辞めるときの上限も決まっている
中途解約も法律で認められています。塾の側が請求できる額には上限があります。
- 授業が始まる前に解約する場合は、1万1千円が上限です。
- 授業が始まった後は、すでに受けた分の対価に加えて、2万円または1か月分の対価のうち低いほうが上限です。
教材などの関連商品も、返品の対象になります。クーリング・オフの期間中であれば、使用済みでも引き取ってもらえます。金額の考え方は消費者庁のQ&Aで確認できます。
ただし、短期の単発講習は要件を外れることがあります。期間が2か月以内、または金額が5万円以下の場合です。その講習が対象になるかどうかは、書面で確認するのが確実です。
面談のあと、家でどう話すか
面談の効果が決まるのは、終わったあとの数日です。その日のうちに、聞いた内容を本人と共有しておきましょう。
このとき、言われた事実と親の感想は分けて伝えてください。「だから言ったでしょう」を足すと、本人は話を聞かなくなります。
講習をすすめられた場合は、本人にも聞いてください。通うのは本人です。納得していない講習は、出席だけして終わりになりがちです。
話し合った結果、塾を替えるという結論になることもあります。伝え方に迷うときは塾を辞める理由の伝え方と例文を参考にしてください。
契約の内容でもめてしまったときは、家庭だけで抱えないでください。お住まいの自治体の消費生活センターに相談できます。窓口は国民生活センターの案内から探せます。
まとめ
塾の保護者面談は、提案を受け取るだけの時間ではありません。塾が持っている記録を受け取り、家庭の事情と希望を伝える場です。
直近の成績を並べ、本人の困りごとを聞き、質問を3つ用意する。年間の上限額を先に決めておく。この準備だけで、面談は判断できる時間に変わります。
そして、その場で契約しなくてよいことを覚えておいてください。書面を受け取り、持ち帰って考える。それが法律にも沿った進め方です。