中学3年生の秋になると、学校から進路希望調査の用紙が配られます。第一志望に何を書けばいいのか、まだ決まっていないのに出していいのか、迷う人は多いはずです。
この記事では、進路希望調査がどういう書類なのかを先に整理します。そのうえで第一志望の決め方、決まっていないときの書き方、保護者の記入欄、提出後に変えたくなったときの考え方を順番に説明します。
進路希望調査とは?今の時点の志望校を学校に伝える書類
進路希望調査は、今の時点で進学したいと思っている学校を書いて、学校に提出する書類です。入試の出願そのものではありません。
担任の先生はこの用紙をもとに、三者面談で話す内容や、受験できそうな学校の範囲を考えます。つまり進路希望調査は、進路相談のスタート地点にあたる書類です。
学校の進路指導・キャリア教育の一部として行われる
進路指導は学校が思いつきで行っているものではなく、学習指導要領に位置づけられた活動です。文部科学省は、特別活動を要としてキャリア教育を充実させることを学校に求めています。ねらいは、生徒が「学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら」社会的・職業的自立に必要な力を身に付けることです。根拠は文部科学省「児童生徒の発達の支援」で確認できます。
進路希望調査は、そのなかで生徒自身に将来を考えさせるための材料として使われます。だから「まだ分からない」と正直に書くことにも、ちゃんと意味があります。
書いた内容は都道府県の統計にもなる
進路希望調査の集計は、学校のなかだけで終わりません。多くの都道府県では、教育委員会が中学校から希望状況を集めて統計として公表しています。
たとえば埼玉県教育委員会は「中学校等卒業予定者の進路希望状況調査」を毎年10月1日と12月15日現在の2回実施しています。県内公立全日制高校、私立高校、通信制高校などへの進学希望者数が進路先別に公表されています(埼玉県教育委員会「中学校等卒業予定者の進路希望状況調査」)。
この数字は、受験生や保護者が志望校の人気の動きを読むときの材料にもなります。自分が書いた1枚が、地域全体の傾向をつくる一部になっているわけです。
進路希望調査はいつ配られる?10月と12月の2回が目立つ
時期は都道府県や学校によって違いますが、2学期にあたる10月ごろと12月ごろの2回というパターンが目立ちます。
栃木県では、中学校等の生徒を対象とした進路希望調査を第1回が10月1日現在、第2回が12月1日現在で実施しています。結果を公表する日付まで事前に示されています(栃木県総合教育センター「進路希望調査結果/進路状況調査結果」)。
回数が複数ある理由は、秋から冬にかけて希望が変わるのが前提になっているからです。1回目に書いた学校をそのまま貫かなければならない、という決まりではありません。
ただし学校が独自の調査を追加していることもあります。配られた用紙の締切と提出先は、必ず担任の先生の説明で確認してください。
第一志望の決め方|偏差値以外に見ておきたい4つの基準
第一志望は、今の偏差値だけで決めないほうが後悔が少なくなります。次の4つをそろえて比べるのがおすすめです。
- 模試の偏差値で、今の学力の位置を確かめます。
- 内申点を自分の都道府県の計算方法で出します。
- 通学時間と交通費を調べます。
- 卒業後の進路(大学進学の実績、就職先、専門学科の内容)を見ます。
学力は模試の偏差値で見る
定期テストの点数は学校ごとに難しさが違うので、他校の受験生と比べる材料にはなりません。地域で広く受けられている模試の偏差値のほうが、志望校との距離を測りやすいです。東京都で受けられている模試の仕組みはV模擬(Vもぎ)の解説記事にまとめています。愛知県なら愛知全県模試の日程と受験料が参考になります。
内申点は自分で計算しておく
公立高校の入試では、多くの都道府県で内申点が合否に関わります。計算方法は都道府県ごとに違うので、自分の地域のやり方で出しておくと志望校を絞りやすくなります。手順は内申点の出し方と計算方法の記事で確認できます。
卒業後の進路から逆算する
同じくらいの偏差値でも、卒業後の進路は学校によってかなり違います。大学進学が中心の高校と、就職や専門学校が多い高校では、3年間の授業の組み方そのものが変わります。
気になる高校のサイトには、進路状況のページがたいてい用意されています。第一志望を書く前に、進学先の一覧に目を通しておくと、志望理由も書きやすくなります。
通学時間と学費も同じくらい大切
3年間ほぼ毎日通う場所なので、通学時間は学力と同じくらい重い条件です。私立を併願する場合は学費も変わります。何を基準に比べるかは高校選びで失敗しないポイントの記事に整理しました。
志望校が決まっていないときの書き方
決まっていないなら、今の時点で気になっている学校を書けば十分です。空欄で出すより、候補を書いて先生と話したほうが前に進みます。
書きやすくするコツは3つあります。
- 学科や系統だけ先に決めます(普通科、工業科、商業科、総合学科など)。
- 通える範囲の学校を地図で3〜5校リストにします。
- そのなかから今の成績で届きそうな順に、第1志望から並べます。
「やりたいことが分からない」という理由で手が止まってしまう人もいます。その場合は、やりたくないことや苦手なことから消していく方法が使えます。
それでも決まらないときは、備考欄や余白に「まだ迷っている」と書いてかまいません。先生にとっては、迷っていること自体が大切な情報です。
保護者の記入欄はどう書けばいい?
保護者欄には、家庭として応援できる範囲と、心配している点を短く書けば十分です。長い作文は求められていません。
たとえば、次のような一文で十分です。
- 本人の希望を尊重したいと考えています。
- 通学は1時間以内、私立は1校までの併願を考えています。
- 家庭学習の習慣がついていない点が心配です。
- 内申点の見通しについて、面談で相談したいです。
お子さんの希望と家庭の考えが違うときは、用紙の上で結論を出そうとしなくてかまいません。「本人は通学に1時間かかる高校を希望していますが、家庭では時間を心配しています」のように両方書けば、面談で調整できます。
面談で何を聞けばいいかは、中学校の三者面談で聞くことの記事にまとめています。
提出したあとに志望校を変えたくなったら
進路希望調査は入試の出願ではないので、提出後に希望が変わっても問題ありません。正式な出願は、各都道府県が定めた時期に願書を出す手続きで行います。
実際、都道府県の調査そのものが10月と12月の2回に分けて行われています。秋から冬にかけて希望が動くことは、制度の側でも想定されているということです。
変えたいと思ったら、次の順番で動くと落ち着いて進められます。
- 変えたい理由を1つに絞って言葉にします(学力、通学、学科、雰囲気)。
- 担任の先生に早めに伝えます。
- 次の調査や面談のタイミングで正式に相談します。
出願後に志願先を変えられる期間があるかどうかは都道府県ごとに違います。自分の地域の入学者選抜実施要項を、教育委員会のサイトで確かめておくと安心です。
私立を第一志望にするかどうかで、単願と併願の扱いも変わります。仕組みは単願と併願の違いの記事で確認してください。
進路希望調査の前にそろえておきたい4つのもの
用紙を前にして固まってしまうのは、手元に材料がないときです。次の4つがあれば、10分ほどで書けます。
- 直近の模試の結果を出しておきます(偏差値と志望校判定)。
- 通知表をそろえます(内申点の計算に使います)。
- 通える範囲の高校の一覧を用意します(学校の資料や都道府県のサイト)。
- 家庭で決めた条件を整理します(通学時間の上限、私立を受けるかどうか)。
この4つは、そのまま三者面談の準備にもなります。進路希望調査は面倒な書類ではなく、家族で進路を話すきっかけとして使うのが一番かしこい使い方です。