英検準1級を目指して参考書を探していると、必ずといっていいほど目にするのが学研の「ひとつひとつわかりやすく」シリーズです。5級・4級・3級・2級と、このシリーズで英検を突破してきた方も多いでしょう。しかし、準1級はそれまでの級と難易度が大きく異なります。「同じシリーズだから安心」と手に取る前に、まずこの本が自分のレベルや目的に合っているかを確認することが大切です。この記事では、実際の内容をもとに本書のメリット・デメリットを正直にレビューします。

英検準1級はどれくらい難しいのか

準1級の対策書を選ぶ前に、試験の難易度を正確に把握しておくことが重要です。

大学中級レベルという壁

英検準1級は大学中級程度のレベルに相当し、合格には約7,500〜9,000語の語彙が必要です。英検2級が高校卒業程度で必要語彙数4,000〜5,000語とされているのと比べると、語彙だけで見ても求められる水準が大きく上がります。CEFRではB2レベルに相当し、一次試験の合格率はかつて15〜18%程度と公表されていたほど、決して簡単な試験ではありません。

2024年度リニューアルで変わったこと

2024年度から英検の試験形式がリニューアルされました。準1級では、ライティングに英文要約問題が新たに追加されたことが最大のポイントです。200語程度の英文を60〜70語程度にまとめる問題で、単に文法や語彙を知っているだけでは太刀打ちできない、読解力と記述力の両方が問われる新形式です。準1級の対策書を選ぶ際には、このリニューアルに対応しているかどうかを必ず確認しましょう。

『英検準1級をひとつひとつわかりやすく』とはどんな参考書か

ここでは、本書の基本情報と構成を整理します。

シリーズの特徴とコンセプト

「ひとつひとつわかりやすく」シリーズは、左ページに解説・右ページに練習問題というスモールステップ形式が最大の特徴です。一見すると難しく見える内容も、図解やイラストを交えながら噛み砕いて解説されており、英語への苦手意識がある人でも取り組みやすい設計になっています。シリーズ累計発行部数は1,000万部を超えており、英検対策書の中でも圧倒的な信頼と実績を誇っています。

改訂版の収録内容

2024年8月に発売された改訂版は、試験リニューアルに対応した内容になっています。リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングと全技能を網羅しており、2024年度から追加された英文要約問題についても、「左ページ解説・右ページ練習問題」の形式でしっかり解説されています。各分野の最後には予想テストがあり、巻末には本番形式の模擬試験が1回分収録されています。音声はスマートフォンの再生アプリやQRコードから聞くことができ、CDなしでリスニング対策が可能です。また、二次試験(面接・スピーキングテスト)の対策も2題分収録されており、1冊で一次試験から二次試験まで対策できる設計になっています。

実際に使ってみて感じたメリット

本書には、準1級の入門書として明確な強みがあります。

解説のわかりやすさが圧倒的

本書の最大の強みは、複雑な内容を丁寧に噛み砕いた解説力です。オールカラーの見やすい紙面で、図解を用いながら合格に必要なポイントをひとつひとつ整理してくれるため、「準1級と聞いただけで頭が真っ白になる」という方でも無理なく読み進められます。特にライティングや文法の解説は、ルールと使い方が視覚的に整理されており、独学でも理解しやすいと評価されています。

準1級の基礎固めに向いている理由

英検2級を取得したばかりで準1級に初めて挑戦する人にとって、本書は勉強のスタート地点として非常に優秀な1冊です。まず試験全体の構成と出題傾向を把握できるため、「何を、どの順番で勉強すればいいか」という学習設計がしやすくなります。また、スモールステップ形式のため、1日1〜2見開きずつ無理なく進められ、学習継続のハードルが低い点も実用的です。英語が苦手な人や、久しぶりに英語を勉強し直す社会人にも向いています。

正直なデメリットと注意点

一方で、本書には準1級合格を目指す上で無視できないデメリットもあります。

問題演習の量が少ない

本書の弱点として最も多く挙げられるのが、演習量の少なさです。各見開きの右ページに練習問題が配置され、巻末に模擬試験が1回分ありますが、実際の試験で求められるレベルの問題を繰り返し解く練習としては不十分です。準1級の一次試験合格には、長文読解のスピードと精度を高める実戦練習が欠かせませんが、本書だけではその訓練量を確保するのが難しいと言えます。過去問集や別途問題集との併用が前提になります。

語彙・表現のカバー範囲に限界がある

準1級合格には約7,500〜9,000語の語彙が必要とされていますが、本書の単語・語彙カバーはあくまで基礎的な範囲にとどまります。本書で語彙の学習が完結するとは言い難く、専用の英検準1級向け単語帳を別途用意することが実質的に必須です。本書は「全体像をつかむ入門書」として優れていますが、語彙対策は本書に頼りすぎず、単語帳と並行して進めることを強くおすすめします。

こんな人に向いている・向いていない

本書の特性を踏まえると、向き不向きがはっきりと分かれます。

この本が向いている人

次のような方には、本書は非常に有効な1冊です。

  • 英検2級に合格したばかりで準1級に初めて挑戦する方
  • 試験のどのセクションから手をつければいいかわからない方
  • 英語に苦手意識があり、やさしい解説からスタートしたい方
  • 久しぶりに英語学習を再開する社会人

準1級の全体像をつかむ最初の1冊として本書は機能します。いきなり過去問を解いて挫折するくらいなら、まず本書で基礎を固めてから演習に入る流れが効果的です。

もっと別の教材が向いている人

一方で、以下のような方には物足りなさを感じる可能性があります。

  • 英検2級で高得点を取得しており、ある程度英語力に自信がある方
  • 準1級の過去問を解いてもそれほど難しく感じない方
  • 演習量を最初から確保してガンガン解き進めたい方

このような方は、旺文社の過去問題集や単語帳を中心に据えた学習計画の方が合っています。

一緒に使いたいおすすめの教材

本書は入門書として優れていますが、合格を目指すには以下の教材と組み合わせることを強くおすすめします。

まず、語彙対策には専用の単語帳が必要です。準1級レベルの語彙を体系的に覚えるための単語帳を1冊用意しましょう。次に、演習には旺文社の過去問題集(過去6回分)が定番です。本番形式の問題を繰り返し解くことで、時間配分や問題傾向への慣れを養えます。本書で基礎を固め、単語帳と過去問集で実戦力を積み上げる3本柱が、準1級合格への現実的なルートです。

まとめ

『英検準1級をひとつひとつわかりやすく』改訂版は、準1級学習のスタートに適した入門書という位置づけが正確です。2024年度リニューアルに対応しており、英文要約問題を含む全技能をわかりやすく解説している点は高く評価できます。ただし、この1冊だけで合格を目指すには演習量と語彙カバーが不足しているため、過去問集や単語帳との併用は必須です。「準1級が怖い」「どこから手をつければいいかわからない」という方にとって、本書は不安を取り除いてくれる最適な最初の1冊です。本書で全体像を掴んだ上で、しっかりと演習を積み重ねて合格を目指しましょう。