「やらなきゃいけないのは分かっているのに、勉強のモチベーションが上がらない」という悩みは、多くの中高生が一度は経験するものです。やる気が出ないのは、性格や根性だけの問題ではありません。
この記事では、モチベーションが下がる主な原因と、上げて長く続けるための方法を、心理学の研究で分かっていることも交えて紹介します。後半では、お子さんのやる気が気になる保護者の方に向けた関わり方もまとめました。
勉強のモチベーションが上がらないのはなぜ?
原因は、目標、やり方、環境、体調、気持ちのどこかにあることがほとんどです。原因によって効く対策が変わるので、まずは自分に当てはまるものを探してみましょう。
目標が遠すぎて、今日やることが見えない
「志望校に合格する」という目標は大切です。ただ、それだけでは今日何をすればいいかが分かりません。ゴールが遠いと、努力しても前に進んでいる実感が持てず、やる気が続きにくくなります。
やり方が分からず、成果も見えない
頑張ったのに点数が上がらない経験が続くと、「やっても無駄かも」と感じやすくなります。何から手をつければいいか分からないときも同じです。これは怠けではなく、手応えが得られていないサインです。
スマホやゲームがすぐ手に取れる
スマホやゲームはすぐに楽しさが返ってきますが、勉強の成果が見えるのはずっと先です。目の前にすぐ楽しめるものがあれば、勉強が後回しになるのは自然なことです。
睡眠不足や疲れがたまっている
部活や夜更かしで疲れがたまっていると、気持ち以前に頭が働きにくくなります。やる気が出ない日が続くときは、まず睡眠や生活リズムを見直してみてください。
「やらされている」と感じている
「親に言われるから」「怒られたくないから」という理由だけで勉強していると、気持ちは長続きしにくくなります。何のために勉強するのかを自分の言葉で持てると、少しずつ前向きに取り組みやすくなります。
モチベーションは動き出してから上がりやすい
モチベーションが上がるのを待つより、小さく動き出すほうが近道です。やる気が十分でなくても、始めてしまえば続けられることは少なくありません。
最初の作業を数分で終わるものにする
「問題集を10ページ」ではなく、「昨日間違えた1問を解き直す」「英単語を5個だけ見る」から始めましょう。小さな作業でも一つ終えると、次の作業に移りやすくなります。
机に向かうまでのハードルを下げる工夫は、やる気に頼らず勉強を始める仕組みの作り方で詳しく紹介しています。
目標を「今日できること」まで分ける
大きな目標は、月・週・日の単位に分けると、今日やることがはっきりします。
たとえば「定期テストで数学70点」が目標なら、「今週は教科書の練習問題を一通り解く」「今日は例題を3つ解き直す」のように分けます。今日の目標は、少し頑張れば確実に終わる量にするのがコツです。
やったことを記録して手応えを作る
勉強した時間や終えたページ数を、手帳やアプリに記録してみましょう。点数はすぐには変わりませんが、記録は毎日増やせます。記録がたまるほど、自分が前に進んでいることが目で見て分かるようになります。
研究をもとにした、やる気を保つ3つの工夫
モチベーションは心理学でも研究が進んでいるテーマです。ここでは、研究をもとにした方法のうち、中高生の勉強に取り入れやすいものを3つ紹介します。
理想だけでなく「障害」も具体的に考える
合格した自分を想像するのは楽しいものですが、想像するだけでは行動につながりにくいとも言われます。ニューヨーク大学の心理学者ガブリエル・エッティンゲン氏は、願いと一緒に、それを邪魔する障害を考えることの大切さを研究してきました。
その研究をもとにしたWOOP(ウープ)という方法では、次の4つを順番に考えます。
- Wish(願い)では、今週かなえたいことを1つ決めます。
- Outcome(結果)では、かなったときの一番うれしいことを思い浮かべます。
- Obstacle(障害)では、それを邪魔しそうな自分の行動や気持ちを探します。
- Plan(計画)では、その障害が出たときにどうするかを決めます。
たとえば「帰宅後すぐスマホを見てしまう」が障害なら、「帰宅したらスマホを充電器に置き、それから机に向かう」と決めておきます。
「〜したら〜する」と先に決めておく
きっかけと行動をセットで決めておく方法は、「実行意図(if-thenプランニング)」と呼ばれます。心理学者のピーター・ゴルヴィツァー氏らが研究してきた方法です。2006年に発表された、多くの研究をまとめた分析でも、目標を達成しやすくなる効果が報告されています。
「夕食を食べ終わったら、机で英単語を10分やる」「部活から帰ったら、まず数学のワークを1ページ解く」のように決めてみましょう。毎回「やろうかな、どうしようかな」と迷う時間が減ります。
スマホは机の上ではなく別の部屋に置く
テキサス大学オースティン校の研究チームは、2017年に約800人を対象にした実験の結果を発表しました。スマホを置く場所を変えて、認知テストの成績を比べたものです。スマホを別の部屋に置いた人は、机の上に置いた人より成績が良かったと報告されています。
その後の追試では同じ結果がはっきり出なかった研究もあり、効果の大きさには議論があります。それでも、目に入らない場所に置けば、通知や画面に気を取られる場面は減らせます。家でのルールづくりは、受験生のスマホ管理のルールも参考にしてください。
長く続けるには睡眠と休憩を削らない
モチベーションを保つには、気持ちの工夫だけでなく体のコンディションも欠かせません。睡眠不足や疲れがたまった状態では、どんな工夫をしても続きにくくなります。
中高生に必要な睡眠時間は?
厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023では、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保するよう示されています。
夜遅くまで勉強して睡眠を削ると、翌日の授業や勉強に集中しにくくなります。受験期の睡眠の考え方は、受験生に必要な睡眠時間と睡眠の整え方で詳しく解説しています。
休憩は短く、体を動かす
座りっぱなしで勉強を続けると、疲れがたまって集中が途切れやすくなります。1つの課題が終わるごとに立ち上がり、伸びをしたり水を飲んだりして短く休みましょう。
休憩中にスマホで動画を見始めると、なかなか勉強に戻れなくなります。休憩の終わりの時刻を先に決めておくと、切り替えやすくなります。
気分が乗らない日は最低限だけで終える
どうしても気持ちが乗らない日は、誰にでもあります。そんな日は「単語を5個だけ見る」「1問だけ解く」など最低限のことだけやって、早めに休むのも一つの方法です。
ゼロの日を作らないことで、次の日に再開しやすくなります。今日の立て直し方は、勉強のやる気が出ない時の対処法にまとめています。
子どもを勉強のやる気にさせるには?
保護者ができるのは、叱って勉強させることより、お子さんが「自分で決めた」と感じられる関わり方です。「勉強しなさい」を繰り返すほど、反発されてしまうこともあります。
結果より、取り組み方をほめる
心理学者のキャロル・ドゥエック氏らは、1998年に子どものほめ方についての研究を発表しました。「頭がいいね」とほめた場合と「よく頑張ったね」とほめた場合を比べたものです。能力をほめられた子どもは、難しい問題で失敗したあと、粘り強さや意欲が下がりやすかったと報告されています。
「計算ミスが減ったね」「毎日単語を続けているね」のように、具体的な取り組みを言葉にして伝えてみてください。兄弟や友達と比べる言葉は、やる気を下げてしまうことがあるので避けましょう。
何をするかは本人に選ばせる
「今日は何からやる?」「何時から始める?」と、やることや順番をお子さん自身に決めてもらいましょう。親は計画を押しつけるより、困ったときの相談役に回るのがおすすめです。
声かけの具体例は、勉強しない中学生への親の声かけと関わり方で紹介しています。
やる気が出ない状態が長く続くときは
一人で抱え込まず、周りの大人や相談窓口を頼ってください。勉強の工夫だけで解決しようとしなくて大丈夫です。
何をしても楽しいと感じられない、朝起きられない日が続く、食欲がないといった様子があるときは、早めに相談しましょう。担任の先生やスクールカウンセラー、自治体の教育相談、医療機関が相談先になります。
保護者の方も、「甘え」や「怠け」と決めつけず、まずはお子さんの話を聞くことから始めてみてください。文部科学省の24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は、夜間や休日も含めていつでも電話で相談できる窓口です。
まとめ
勉強のモチベーションは、気合いで上げるより、原因に合った工夫で整えるほうが長続きします。
- 原因は、目標・やり方・環境・体調・気持ちのどこかにあることが多いです。
- 小さく始めて、記録で「進んでいる実感」を作りましょう。
- 障害を先に考え、「〜したら〜する」と行動を決めておくと迷いが減ります。
- 睡眠と休憩を削らず、つらい状態が続くときは相談してください。
まずは今日、数分で終わる作業を1つ決めるところから始めてみてください。