「音楽を聴きながら勉強してもいいの?」と迷ったことはありませんか。家族に「気が散るからやめなさい」と言われても、無音だと落ち着かないという人は多いはずです。
この記事では、音楽を聴きながら勉強する効果とデメリットを、海外の研究結果をもとに整理します。勉強の内容に合わせた使い分け方や、音量の目安も紹介します。
音楽を聴きながら勉強するのはアリ?ナシ?
結論からいうと、勉強の内容によって向き不向きが分かれます。文章を読む・深く考える勉強には無音か歌詞のない音楽が向き、気分を上げたいときや単純な作業には音楽が役立ちます。
背景音楽が作業に与える影響については、多くの研究をまとめて分析した論文があります。Kämpfeらによるメタ分析(2011年、学術誌Psychology of Music)では、全体を平均すると効果はほぼゼロでした。
ただし内訳を見ると、音楽は文章を読む作業を妨げ、記憶にも小さなマイナスの影響がありました。その一方で、気分や感情には良い影響が見られています。
つまり音楽は、気持ちを整える道具としては役立っても、読む力や覚える力を直接高めるものとはいえません。「音楽があるほうがはかどる」と感じるのは、気分が乗って机に向かいやすくなるからかもしれません。
音楽を聴きながら勉強する効果
音楽の良さは、主に気持ちの面に表れます。代表的なのは、気分が上がる、周りの音が気になりにくくなる、勉強を始める合図になる、の3つです。
好きな曲で気分が上がり、机に向かいやすくなる
好きな音楽を聴くと、快感や意欲に関わるドーパミンが脳内で放出されることが分かっています。カナダ・マギル大学の研究チームが2011年に発表した研究では、音楽で気持ちが高まる瞬間とその直前に、ドーパミンが放出されていました。
また、心理学の学術誌Psychological Scienceには、2001年にThompsonらの研究が掲載されています。「モーツァルトを聴くと成績が上がる」という説を検証した研究です。聴いたあとの課題の成績差は、曲そのものではなく、気分や頭の冴え具合の違いで説明できると報告しています。
やる気が出ない日に、好きな曲で気持ちを整えてから始めるのは理にかなった使い方です。やる気が出ない原因そのものに向き合いたいときは、勉強のモチベーションを上げる方法とやる気が出ない原因も参考になります。
周りの雑音が気になりにくくなる
家族の話し声やテレビの音など、不意に聞こえる音は集中を途切れさせます。一定の音を流して周囲の音を目立たなくすることを「マスキング」と呼び、イヤホンで音楽を聴くのもこの効果をねらった使い方です。
ただし、周りの音を消すことが目的なら、歌詞のない音楽や雨音などの環境音で十分です。大学生24人を対象にしたJohanssonらの研究(2011年)では、カフェの雑音を流しても、読解の点数は静かな環境と有意な差がありませんでした。
家の生活音やテレビがどうしても気になる場合は、家で勉強できない原因と今日からできる対処法もあわせて確認してみてください。
「この曲で勉強スタート」という合図にできる
毎回同じ曲やプレイリストを流してから勉強を始めると、それが行動のきっかけになります。決まった流れを作っておくと、「さあ始めよう」と気持ちを切り替えやすくなる人もいます。
音楽を聴きながら勉強するデメリット
一番のデメリットは、文章を読む・考えるといった言葉を使う勉強の妨げになりやすいことです。そしてこれは、好きな曲であっても例外ではありません。
歌詞のある曲は読解のじゃまになりやすい
Perhamらの研究(2014年)では、イギリスの大学生30人が4つの条件で読解テストを受けました。静かな環境、歌詞のない音楽、好きな歌詞入りの曲、好みでない歌詞入りの曲の4つです。
点数がもっとも高かったのは静かな環境と歌詞のない音楽で、両者に差はありませんでした。一方で歌詞入りの曲は、好きな曲でも好みでない曲でも同じように点数を下げていました。
歌詞の言葉と、読んでいる文章の言葉が頭の中でぶつかるためと考えられています。日本語の歌はもちろん、英語の歌でも意味を追ってしまう人は影響を受けやすいでしょう。
考える問題では頭の余裕が減る
人が一度に頭の中に置いておける情報の量には限りがあり、これを「ワーキングメモリ」と呼びます。音楽に注意が向くと、その分だけ問題を考えるための余裕が減ってしまいます。
特に、初めて見る数学の応用問題や記述問題のように、じっくり考える場面では影響が出やすくなります。前述のJohanssonらの研究でも、好みでない音楽を流しながら読んだときは、静かな環境より点数が下がっていました。
研究チームは、本人が集中の乱れに気づきにくいことが一因ではないかと考察しています。「はかどっている気がする」という感覚だけで判断しないことが大切です。
無音の試験会場で落ち着かなくなることも
いつも音楽を流していると、静かな試験会場でかえって落ち着かなくなることがあります。定期テストや入試の本番で、音楽を聴きながら問題を解くことはできません。
音楽を使う人も、本番と同じ無音の状態で問題を解く時間を週に何回かつくっておくと安心です。
勉強の内容別に見る音楽の使い分け
音楽を流すかどうかは、その日にやる勉強の中身で決めるのが現実的です。目安は次のとおりです。
読解・暗記・思考系は無音か歌詞なしで
英語や国語の長文読解、社会の流れをつかむ勉強、数学の応用問題は、言葉や思考をたくさん使います。こうした勉強は、無音か、歌詞のない静かな音楽・環境音にとどめるのがおすすめです。
英単語や用語の暗記も、意味を考えながら覚える場合は歌詞入りの曲を避けたほうが無難です。先ほどのメタ分析でも、音楽が記憶に小さなマイナスの影響を与えるという結果が出ていました。
計算練習や書き取りは小さめのBGMでもよい
計算ドリルや漢字の書き取り、ノートの清書は、やり方が決まっている作業です。読解ほど言葉を使わないため、歌詞のない曲を小さな音量で流しても取り組みやすいでしょう。
単調で飽きやすい作業ほど、音楽があると続けやすいと感じる人もいます。ただし、ミスが増えたと感じたら音楽を止めて様子を見てください。
やる気が出ないときは勉強の「前」に聴く
勉強中の音楽が気になる人は、始める前の5分だけ好きな曲を聴く方法がおすすめです。前述のThompsonらの研究でも、聴いたあとの気分や頭の冴えの高まりが、課題の成績にプラスに働いていました。
曲が終わったら音楽を止めて、そのまま問題に取りかかりましょう。歌詞入りの好きな曲も、このタイミングなら読解の妨げになりません。
流すならどんな音楽がいい?選ぶときの基準
勉強中に流すなら、歌詞がなく、聴き慣れていて、落ち着いたテンポの曲が基本です。
- ピアノ曲やクラシック、ローファイなど、歌詞のない曲を選びます。
- 初めて聴く曲より、何度も聴いて展開を知っている曲のほうが注意を奪われにくいでしょう。
- メタ分析では、音楽のテンポが作業のペースに影響することも示されています。速すぎる曲は避けましょう。
- 雨音や川の音などの環境音も、周りの雑音を目立たなくする目的なら使えます。
なお、「クラシックを聴くと頭が良くなる」という話は、先ほど紹介したとおり、気分の変化で説明できるとされています。ジャンルにこだわるより、自分が落ち着ける曲を選ぶほうが大切です。
ジャンルごとの特徴や具体的な選び方は、勉強に合う音楽とBGMジャンルの選び方で詳しく紹介しています。
音楽を上手に使うための4つのコツ
同じ音楽でも、使い方しだいで勉強のじゃまにも味方にもなります。次の4つを意識してみてください。
音量は小さめにして耳を休ませる
音量は、周りの音が少し聞こえる程度の小ささが目安です。世界保健機関(WHO)の安全な聴き方の案内では、機器の音量を最大の60%以下にすることや、こまめに耳を休ませることを勧めています。
長時間の勉強でイヤホンを使い続けると、耳への負担が大きくなります。耳鳴りや聞こえにくさが続くときは、早めに耳鼻咽喉科に相談してください。
曲は先に決めてスマホを触らない
曲を選ぶたびにスマホを手に取ると、そのまま通知やSNSに気を取られがちです。勉強を始める前にプレイリストを決め、再生したらスマホは手の届かない場所に置きましょう。
スマホとの付き合い方に悩んでいる場合は、中学生でもできるスマホの集中対策も参考にしてください。
時間を区切り、休憩中に好きな曲を聴く
25分勉強して5分休む「ポモドーロ・テクニック」のように時間を区切ると、音楽の使い方にもメリハリがつきます。勉強中は無音か歌詞なしの曲にして、休憩中は好きな歌を聴くといった使い分けがしやすくなります。
休憩の上手な取り方は、勉強中の疲れをとる気分転換のテクニックで紹介しています。
無音で解く時間もつくる
テスト前の演習や過去問は、本番と同じように無音で解くのがおすすめです。音楽ありとなしの両方で集中できるようにしておくと、どんな環境でも力を出しやすくなります。
まとめ
音楽を聴きながら勉強する効果とデメリットを、要点だけ振り返ります。
- 音楽の良さは、気分を上げることと、周りの雑音をやわらげることにあります。
- 歌詞入りの曲は、好きな曲でも読解の妨げになりやすいです。
- 読む・考える勉強は無音か歌詞なし、単純作業や勉強前の気分づくりには音楽が向いています。
「何のために音楽を流すのか」を決めておけば、音楽は勉強の心強い味方になります。自分に合った使い方を少しずつ見つけてみてください。